このたびの熊本県を中心とする地震により、被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
今も不安な時間を過ごしている方々の安全と、必要な支援が一日も早く届くことを願っています。
大きな災害は、被災地で暮らす方々はもちろん、報道を通してその出来事を知った子どもの心にも影響を与えることがあります。
直接揺れを経験していなくても、倒壊した建物や避難する人々の映像を繰り返し見たり、周囲の大人が不安そうに話す様子に触れたりすることで、子どもが怖さを感じることがあります。
このようなとき、そばにいる大人には何ができるのでしょうか。
今回は、大きな地震や災害のあとに、子どもの安心を守るために家庭でできることを考えます。
1.被災地の映像を繰り返し見せない
災害が起きると、テレビやインターネットで被災地の映像が繰り返し流れます。
大人にとっては状況を知るために必要な情報でも、子どもには刺激が強すぎる場合があります。
幼い子どもは、同じ映像が繰り返し流れることで、災害が何度も起きているように感じることもあります。小学生以上の子どもも、映像に強く感情移入し、不安が大きくなる可能性があります。
大人が情報を確認するときは、
- 子どものいない場所で見る
- 音量を小さくする
- 確認する時間を決める
- テレビをつけたままにしない
- 信頼できる公的機関の情報に絞る
などの工夫ができます。
情報から完全に遠ざけるのではなく、子どもの年齢や様子に合わせて、触れる情報の量を大人が調整します。
2.子どもの質問には、短く分かりやすく答える
地震のニュースを見た子どもから、
「ここにも地震が来るの?」
「家は壊れない?」
「お父さんやお母さんは死なない?」
「また地震が起きるの?」
と聞かれることがあります。
大人にも、これから何が起きるかを正確に答えることはできません。
そのようなときは、安心させようとして「絶対に大丈夫」と言い切るよりも、今分かっていることを短く伝えます。
例えば、
「今、ここは安全だよ」
「何かあったときに逃げられるよう、準備しているよ」
「あなたを守るために、たくさんの大人が動いているよ」
と話すことができます。
分からないことを聞かれた場合は、
「今はまだ分からないけれど、分かったら伝えるね」
と正直に答えてもよいでしょう。
一度説明すれば不安がなくなるとは限りません。同じことを何度も尋ねられたときにも、できる範囲で同じ言葉を静かに繰り返します。
3.「いつもの流れ」をできる範囲で続ける
大きな出来事のあとには、いつもの食事、いつもの遊び、いつもの眠りが、子どもの安心を支えることがあります。
毎日同じ時間に食卓を囲む。
いつもの絵本を読む。
好きな遊びをする。
夜になったら明かりを落とす。
こうした何気ない暮らしの流れが、子どもに「ここは安心できる場所」と感じさせてくれることがあります。
被災地では、これまで通りの生活を続けること自体が難しい場合があります。まずは身の安全と、自治体などの公的な案内を最優先にしてください。
可能な範囲で、
- いつもの言葉で声をかける
- なじみのある歌をうたう
- 好きなタオルやおもちゃをそばに置く
- 食事や眠りの時間を大きく変えない
- 遊べる場所や時間をつくる
など、小さな「いつも」を保ちます。
すべてを整えようとしなくても、一つでも安心できるものがあれば、それが子どもの支えになることがあります。
4.子どもの変化を急いで直そうとしない
災害のあとや災害報道に触れたあと、子どもに次のような姿が見られることがあります。
- いつもより甘える
- 大人から離れたがらない
- 一人で眠ることを怖がる
- 些細なことで泣いたり怒ったりする
- 地震について何度も尋ねる
- 地震の絵や、避難する遊びを繰り返す
- 以前できていたことを嫌がる
このような変化は、子どもが自分の安心を確かめたり、体験したことや知ったことを整理したりしている表れかもしれません。
「もう大丈夫だから」
「怖がらなくていいよ」
「その遊びはやめなさい」
と急いで元に戻そうとせず、まずは静かにそばにいます。
子どもが話し始めたら耳を傾けます。ただし、何が怖かったのか、どのように感じているのかを、無理に聞き出す必要はありません。
絵や遊びに災害が表れる場合も、危険がなければ、すぐに止めずに見守ります。子どもは遊びを通して、自分の中にある気持ちを表現していることがあります。
子どもに安心を伝える言葉
何と声をかければよいか迷ったときは、短く、具体的な言葉を使います。
例えば、
「怖かったね」
「心配になったんだね」
「ここに一緒にいるよ」
「今は安全な場所にいるよ」
「大人たちが安全にするために動いているよ」
「何か心配なことがあったら、いつでも話してね」
と伝えます。
子どもの不安を否定せず、「怖いと感じていること」をそのまま受け止めます。
言葉だけでなく、そばに座る、手を握る、背中をさするなど、その子が心地よいと感じる関わりも安心につながります。
大人自身の不安も大切に扱う
災害の報道に触れれば、大人も不安になります。
過去の災害を経験した方は、当時の記憶がよみがえることもあるでしょう。
大人が不安を感じること自体は、決して悪いことではありません。子どもの前で、常に平静でいなければならないわけでもありません。
ただし、不確かな情報を繰り返し話したり、強い不安をそのまま子どもへ伝え続けたりすると、子どもの心配が大きくなることがあります。
情報を確認する時間を決め、信頼できる人と話し、できるだけ休息を取ることも大切です。
何気ない日々の営みを、安心につなげる
大きな地震のあと、私たちにできることは一つではありません。
被災地へ心を寄せること。
正確な情報を確かめること。
必要な支援につながること。
そして、身近な子どもの様子を静かに見守ること。
いつもの食卓。
いつもの遊び。
いつものお話。
いつもの眠り。
何気ない日々の営みが、子どもにとって「ここは安心できる場所」と感じる支えになることがあります。
被災地で過ごす子どもたちとご家族が、少しでも安心できる時間を取り戻せますように。
そして、被災された皆さまの暮らしが一日も早く穏やかなものとなりますよう、心よりお祈り申し上げます。
