「ねえ、やって」
「一緒にして」
明日の準備も、上着のボタンを留めることも、いつもは一人でできている。それなのに、今日は大人を呼んでくる。
そんなとき、「もう自分でできるでしょう」と言いたくなることはありませんか。
忙しい時間なら、なおさらです。自分でできることは、自分でしてほしい。その気持ちも自然なものだと思います。
けれど、できることでも、誰かの手を借りたい時があります。
今回は、子どもの「やって」という言葉に、どのように応えられるかを考えてみたいと思います。
「できるかどうか」に加えて、今日の様子を見てみる
一度できるようになったことでも、取りかかりやすい日と、なかなか手が動かない日があります。
少し疲れている。
何から始めようか迷っている。
そばに誰かがいてほしい。
あるいは、いつもと違うボタンが留めにくかったり、明日の持ち物が分からなかったりするのかもしれません。
「やって」という短い言葉だけでは、その理由までは分からないこともあります。
そこで、「いつもはできるのに」と思ったとき、今日の子どもの様子にも少し目を向けてみます。
どこで手が止まっているのか。表情はどうか。何か困っていそうか。
理由をすぐに決めずに眺めることで、手助けの仕方が見えてくるかもしれません。
「どこを手伝おうか」と、一緒に確かめる
子どもが「やって」と頼んできたら、
「どこを手伝おうか」
と聞いてみます。
例えば、明日の準備なら、
「時間割を一緒に見ようか」
「最初の教科書は、一緒に入れようか」
と、聞いてみる。
着替えなら、
「このボタンを一つ、手伝うね」
と、困っている部分を手伝うこともできます。
子どもが「ここにいて」と言うなら、隣に座って見守るだけでもよいでしょう。
何を手伝ってほしいのか、うまく言えないこともあります。そのときは、大人から一つ提案して、様子を見てみます。
少し手伝ったあと、自分で続ける日もあれば、もう少し助けが必要な日もあるでしょう。その日の子どもに合わせて、関わり方を調整していけたらと思います。
親にも、手伝える範囲がある
子どもの気持ちを大切にしたいと思っていても、いつでも手を止められるわけではありません。
食事を作っているとき。仕事をしているとき。大人自身が疲れているとき。
そんな日は、できることを具体的に伝えてみます。
「今は料理をしているから、終わったら一緒に見ようね」
「今日は、持ち物を一緒に確認するところまでできるよ」
「今すぐ全部」という頼みには応えられなくても、いつ、何なら手伝えるかを伝えることはできます。
もちろん、子どもがすぐに納得しないこともあります。
そのときも、できないことまで引き受ける必要はありません。「一緒にしてほしかったんだね」と気持ちを受け取りながら、できる範囲を伝えてよいと思います。
親にも、子どもにも、余裕のない日があります。無理なく続けられる関わり方を、そのつど探していきましょう。
「自分でして」と言ってしまった日も
ここまで読んで、「いつも『自分でして』と言ってしまう」と思われた方もいるかもしれません。
毎回、落ち着いて応じるのは難しいものです。
言い方が強くなったと感じたら、少し落ち着いてから、
「さっきは強く言ってしまったね。どこが難しかった?」
と、話しかけ直すこともできます。
その場でうまく応えられなかった日にも、改めて子どもの話を聞く機会はあります。
親も自分を責め続けず、次にできそうな小さな関わりを見つけていけたらと思います。
自分でできることが増えても、頼りたい日はある
大人でも、いつもなら一人で済ませられることを、誰かと一緒にしたい日があります。
子どもにも、そんな日があるのでしょう。
できるようになったことを喜びながら、今日、手を借りたいと思っている気持ちにも目を向けてみる。
「どこを手伝おうか」
「最初の一つは、一緒にしようか」
そんな一言から始められます。
自分でできることが増えても、誰かと一緒にやりたい日はある。
そう思って耳を傾けると、子どもの「やって」という声が、少し違って聞こえるかもしれません。
