子どもが自分で本を読めるようになると、
「読み聞かせは、もう卒業なのかな」
「いつまでも読んであげると、自分で読まなくなるのでは?」
と思うことがあるかもしれません。
小学校では音読の宿題も始まり、少しずつ長い文章も読めるようになります。
けれど、自分で本を読むことと、誰かの声で物語を聞くことは、少し違う体験です。
ひとりで読めるようになったからといって、読み聞かせを終えなければならないわけではありません。
小学生になっても、子どもが望んでいる間は、親子で物語を楽しんでよいのです。
自分で読むことと、読んでもらうこと
子どもが自分で本を読むときは、文字を目で追い、言葉の意味を確かめながら物語を進んでいきます。
読み始めたばかりの子にとっては、文字を読むこと自体に多くの力が必要です。
一文字ずつ追うことに集中すると、物語の世界へ十分に入る前に疲れてしまうこともあります。
一方、誰かに読んでもらうときには、文字を読むことからいったん離れ、耳から言葉を受け取れます。
声の響きや言葉のリズムに身を委ねながら、
「森はどのような場所だろう」
「この登場人物は、どんな顔をしているのだろう」
「この先、何が起こるのだろう」
と、心の中に物語の世界を描いていきます。
自分で読む力が育っている途中だからこそ、読んでもらうことで出会える物語もあります。
耳から聞いた言葉で情景を描く
シュタイナー教育では、子どもが言葉を聞き、自分の内側に情景を描く体験を大切にします。
映像では、登場人物の顔や風景、色、動きが、すでに完成した形で示されます。
物語を耳から聞くときには、決まった映像がありません。
同じ「深い森」という言葉を聞いても、思い浮かべる木々の形や光、そこに漂う空気は、一人ひとり異なります。
子どもは、語られた言葉を受け取りながら、自分だけの物語の世界をつくります。
大人がその情景を細かく説明したり、正しいイメージを示したりする必要はありません。
物語と子どもの間に生まれるものを、静かに見守ります。
大好きな人の声で聞くということ
読み聞かせの時間には、物語の内容だけではないものも流れています。
いつもの場所に座る。
大好きな人の声に耳を澄ます。
一緒に物語の続きを待つ。
こうした時間そのものが、親子の大切な経験になります。
忙しい一日の中でも、本を開いている間は、親子で同じ物語を囲めます。
途中で会話が生まれる日もあれば、静かに最後まで聞く日もあるでしょう。
子どもが大きくなるにつれて、抱っこをしたり、手をつないだりする時間は少しずつ減っていきます。
それでも、一緒に物語を読むことは、無理なく共有できる親子の時間として残っていきます。
読み終わったあと、質問しなくても大丈夫
読み聞かせをすると、
「きちんと理解できたかな」
「何か学んでほしい」
という気持ちから、読み終わったあとに質問したくなることがあります。
「主人公は、なぜそうしたと思う?」
「このお話から何が分かった?」
「どこが一番面白かった?」
もちろん、自然に会話が始まることもあります。
ただし、毎回感想を求めたり、理解を確かめたりする必要はありません。
読み聞かせが「あとで答えなければならない時間」になると、子どもが物語へ自由に入ることが難しくなる場合があります。
子どもが話したそうなら耳を傾け、何も言わなければ、そのまま物語の余韻を残しておきます。
何日か経ってから、遊びや絵の中に物語の一場面が表れることもあるでしょう。
分からない言葉をすべて説明しなくてもよい
物語の中には、子どもがまだ知らない言葉や、古い表現が出てくることがあります。
そのたびに読むのを止めて説明すると、物語の流れが途切れてしまいます。
子どもが尋ねていない場合は、前後の言葉から感じ取ることに任せてもよいでしょう。
どうしても分からず、物語を楽しめない様子であれば、短く説明してから先へ進みます。
すべての言葉を正確に理解することだけが、物語を楽しむ方法ではありません。
今は分からなかった言葉が、別の物語や日常生活の中で再び現れ、少しずつ意味を持つこともあります。
上手に読もうとしなくても大丈夫
読み聞かせというと、登場人物ごとに声を変えたり、豊かに演じたりしなければならないと思うかもしれません。
けれど、特別な技術は必要ありません。
普段より少しゆっくり、言葉が子どもへ届くように読むだけでも十分です。
大きな声を出したり、感情をすべて声で表現したりしすぎると、子どもが自分で思い描く余地が少なくなることもあります。
大人自身も物語を味わいながら、自然な声で読んでみましょう。
読み間違えたときも、気づいたところから直して先へ進めば大丈夫です。
小学生には、どのような本を選ぶ?
小学生への読み聞かせでは、絵本だけでなく、少し長い物語も楽しめます。
例えば、
- 昔話や民話
- 季節を感じられる物語
- 動物が登場するお話
- 子どもの日常を描いた物語
- 詩や短い言葉の本
- 一日一章ずつ読める児童文学
などがあります。
年齢だけで本を決めず、その子が何に関心を持っているか、どのくらいの長さなら心地よく聞けるかを見ながら選びます。
子ども自身が選んだ本と、大人が「一緒に読みたい」と思う本の両方があってもよいでしょう。
長い物語は、一度に読み終えなくても構いません。
「今日はここまで」と本を閉じ、翌日に続きを楽しみに待つことも、物語の時間の一部です。
大きくなった子どもと本を楽しむ方法
学年が上がると、「読んでもらうのは恥ずかしい」と感じる子もいます。
その場合は、読み聞かせという形にこだわらず、
- 同じ本を交代で読む
- 大人が一章、子どもが一章読む
- それぞれ黙って同じ本を読む
- 面白かった本を紹介し合う
- 詩や短い文章だけ声に出して読む
といった楽しみ方もできます。
親子で本を囲む方法は、子どもの成長とともに変わっていきます。
大切なのは、読み聞かせを続ける形を守ることではなく、物語を分かち合う時間が、親子にとって心地よいものであることです。
読み聞かせに「卒業」を決めなくても
読み聞かせは、まだ字を読めない子のためだけのものではありません。
ひとりで読めるようになった子にも、誰かの声で物語を聞く喜びがあります。
いつまで続けるかを、年齢だけで決める必要はありません。
子どもが望み、大人にも読める時間があるなら、小学生になっても、その先も続けてよいのです。
毎日でなくても、長い時間でなくても構いません。
今夜、久しぶりにお子さんと一冊の本を開いてみませんか。
