子どもが退屈そうにしていたり、遊びがなかなか続かなかったりすると、「何か新しい遊びを用意したほうがよいのかな」と思うことがあります。
けれど、新しいおもちゃを用意しなくても、家にある何気ないものから遊びが始まることがあります。
たとえば、一枚の布。
ハンカチや小さなタオルを、遊びのそばにそっと置いてみるだけでも構いません。
大人には一枚の布に見えていても、子どもの目には、まったく別のものに見えているかもしれません。
一枚の布が、いくつものものに
一枚の布には、決まった遊び方がありません。
たとえば、
- 積み木の船の下に広げれば、海に
- 小さな人形にかければ、お布団に
- おままごとの食器を並べれば、ピクニックの敷物に
- 積み木の家にそっとかければ、屋根に
同じ布でも、その日の遊びや子どもの思いつきによって、違うものになります。
布そのものが変わったわけではありません。
けれど、子どもの中では、そこに海が広がったり、人形が眠り始めたり、新しい物語が動き出したりします。
子ども自身が意味を見つける余地
身近なものを、別のものに見立てて遊ぶことを「見立て遊び」といいます。
使い方が細かく決まっていないものには、子ども自身が意味を見つける余地があります。
「これは、こうして遊ぶもの」と決められていないからこそ、
「今日は海にしよう」
「これは赤ちゃんのお布団」
「ここから先は森だよ」
と、その子なりの世界が生まれます。
何を作ったのかだけではなく、「この子には、何に見えているのだろう」と眺めてみると、いつもの遊びが少し違って見えてくるかもしれません。
大人は、どのように関わればよい?
まずは、そっと置いてみる
布を渡して、遊び方を詳しく説明する必要はありません。
積み木や人形の近くに、そっと置いておくだけでも十分です。
子どもが手に取ったら、何を始めるのか少し待ってみます。
子どもの見ている世界を受け取る
子どもが「ここは海なの」と言ったら、
「ここが海なんだね」
と、そのまま受け取ってみます。
大人が正解を教えたり、さらに面白くしようとアイデアを次々に加えたりしなくても大丈夫です。
質問を重ねるよりも、子どもが話した分だけを受け取りながら、遊びを見守ります。
誘われたら、一緒に遊ぶ
もちろん、いつも黙って見ていなければならないわけではありません。
子どもが一緒に遊びたそうにしているときは、渡された役を受け取って、その世界に加わってみます。
遊び方が分からず戸惑っているようなら、
「積み木の下に敷いてみる?」
と、一つだけ提案することもできます。
大人が布を使って静かに遊び始め、子どもが興味を持ったら迎え入れるのもよいでしょう。
遊びにつながらない日があっても大丈夫
布を置いても、子どもがまったく興味を示さないこともあります。
そんな日は、無理に遊ばせなくても大丈夫です。いったん片づけて、また別の日に出してみてもよいでしょう。
布で遊ぶこと自体が目的ではありません。
大切なのは、大人が期待した遊びをさせることではなく、子どもの中からどのような遊びが生まれるのかを、急がずに見守ることです。
一枚の布を、遊びのそばに
一枚の布が、海になり、お布団になり、屋根になる。
同じものでも、その日の子どもの思いつきによって、違う物語が始まります。
立派な作品にならなくても、遊びが長く続かなくても構いません。
まずは、家にある一枚の布を、いつもの遊びのそばにそっと添えてみませんか。
