「子どもにも、早いうちからAIに慣れさせた方がよいのでしょうか」
「便利になる一方で、自分で考える機会が少なくならないでしょうか」
AIが身近になるにつれて、子どもとの関わらせ方に迷う保護者の方もいらっしゃると思います。
そんななか、ニューヨーク市から、学校での生成AI利用に関する新しい方針が発表されました。
このニュースをきっかけに、子どもの暮らしにどのような経験を残していきたいか、考えてみたいと思います。
ニューヨーク市が発表した「1年間の禁止」とは
ニューヨーク市は2026年9月2日、市の公立学校で、幼児教育から8年生までの子どもが直接利用する生成AIを、2026–27年度の1年間停止すると発表しました。対象は、およそ60万人です。
市は、教師や友だちとの関わり、自分で難しい問題に向き合う経験を重視し、この1年間で影響を検討する方針を示しています。
一方、高校ではAIについて学ぶ授業や、教員の見守りのもとでの限定的な利用が行われます。年齢や利用目的によって、扱いが異なる方針です。
この発表だけで、AIが子どもの学びに与える影響について結論が出たわけではありません。
私は今回のニュースを、「子どもに、どのような経験をさせたいか」を改めて考えるきっかけとして受け止めました。
答えにたどり着くまでに、経験していること
例えば、積み木で橋を作っている子どもがいるとします。
長くつなごうとすると、途中で崩れてしまう。そこで、下に積み木を足したり、並べ方を変えたりしてみる。
隣にいる子に「ここを持っていて」と頼むこともあるでしょう。
うまくいった橋だけを見ると、その前にあった試行錯誤は見えにくいです。
けれど、子どもは自分で考え、手を動かし、起きたことを確かめています。ときには、誰かと相談しながら、もう一度やってみています。
作文でも、すぐには言葉が出てこないことがあります。
「楽しかった」のあとに何を書こうか。どの場面を伝えたいのか。話しながら思い出したり、一度書いた言葉を直したりすることもあります。
そうした、答えや作品にたどり着くまでの時間にも、私は目を向けていたいと思います。
家庭でできることは、「どうして?」に少し付き合うこと
家庭でも、子どもと一緒に考える機会はあります。
例えば、子どもが「どうして?」と尋ねてきたとき。
時間に余裕があり、子どもも興味を持っているようなら、すぐに答えを調べる前に、
「あなたは、どんなふうに思う?」
「どうしたら確かめられそう?」
と声をかけてみます。
散歩中に「この葉っぱ、どうして色が違うの?」と聞かれたら、まず一緒に葉を眺めてみる。同じ木のほかの葉と比べたり、帰ってから図鑑を開いたりしてもよいでしょう。
紙飛行機がうまく飛ばなければ、「羽の折り方を少し変えてみようか」と、一緒に試してみることもできます。
その場で答えが見つからないこともあります。
「まだ分からないね。また見てみようか」
と、問いを残したまま終える日があってもよいと思います。
質問のたびに、考えさせなくても大丈夫
ただ、「どう思う?」という声かけも、毎回続くと、子どもには負担になることがあります。
ただ答えを知りたいときもあれば、疲れていて考える気分ではないときもあるでしょう。
そんなときは、知っていることを伝えたり、一緒に調べたりして構いません。
子どもが黙ったからといって、答えが出るまで待たせ続ける必要もありません。
「一緒に見てみようか」
「少し手伝おうか」
と、大人が支えることもできます。
親も忙しい毎日のなかで、すべての問いに丁寧に付き合えるわけではありません。余裕のあるときに、子どもの興味が向いていることへ少し付き合う。それくらいからで十分です。
AIのある社会で、どのような経験を重ねてほしいか
子どもたちは、AIのある社会を生きていきます。
何歳から、どのような場面で、どう使うのか。そして、AIを使いながらも、本人が考えたり、確かめたりする機会をどう残すのか。
大人も、子どもの様子を見ながら考えていく必要があると思います。
自分の手で触れること。
思いついた方法を試すこと。
人の話を聞き、自分の言葉で伝えること。
分からないときに、誰かを頼ること。
私は、こうした経験を、子どもの暮らしのなかで大切にしていきたいと思っています。
今日、もし子どもが何かをじっと見つめたり、うまくいかないことを試していたりしていたら、少しだけその様子を眺めてみませんか。
子どもの中で、どのような問いが動いているのか。
便利な道具が増える時代にも、急がずに見守る余白を、親子の暮らしに残していけたらと思います。
