「ちゃんと片づけて」
「きちんと準備して」
毎日の暮らしのなかで、つい口にする言葉です。
何度伝えても子どもが動き出さないと、「さっきも言ったでしょう」と、声が強くなることもあるかもしれません。
けれど、大人が思い浮かべている「ちゃんと」の中身が、子どもにも同じように伝わっているとは限りません。
そんなときに試せる、小さな工夫があります。
それは、今してほしいことを一つだけ、目に浮かぶ言葉にしてみることです。
「ちゃんと」の中には、何が入っている?
例えば、大人が「ちゃんと片づけて」と言うとき、頭の中には、片づいた部屋の様子が浮かんでいるかもしれません。
積み木はかごへ。本は棚へ。机の上には何も置かない。
けれど、子どもは「床のものを机に置けばよい」と思っていることもあるでしょう。片づけることは分かっていても、何から手をつければよいのか迷っているかもしれません。
同じ「片づける」という言葉でも、思い描くことが違う場合があります。
そこで一度、大人自身も「今、何をしてほしいのだろう」と、お願いの中身を確かめてみます。
今してほしいことを、一つだけ具体的に
子どもが取りかかりにくそうにしているときは、最初にすることを一つ、具体的に伝えてみます。
「ちゃんと片づけて」なら、
「積み木を、このかごに入れよう」
「きちんと準備して」なら、
「まず、筆箱をランドセルに入れよう」
というように、何を、どこへ、どうするのかを言葉にします。
「積み木をしまって、本も戻して、それから明日の準備をして」と、一度にいくつも伝えたくなることもあるでしょう。
そんなときも、まずは目の前の一つから。
終わった様子を見て、次に何をするか、一緒に確かめることもできます。
言葉に、指さしや動きを添えてみる
言葉に加えて、置く場所を指さすこともできます。
「このかごに入れよう」とかごを示したり、大人が積み木を一つ入れて見せたりする方法です。
「ここだよ」と示すことで、親子が同じ場所を見ながらやりとりできます。
そして、伝えたあとは、少し待ってみます。
子どもがどこを見ているか。何に手を伸ばそうとしているか。
すでに動き始めているなら、その続きを見守ります。次の言葉を急いで重ねなくてもよいでしょう。
具体的に伝えても、動き出さないときは
何をするかが分かっていても、すぐには取りかかれないことがあります。
まだ遊びを続けたいのかもしれません。疲れているのかもしれません。片づける場所がいっぱいで、入れ方に困っていることもあるでしょう。
そんなときは、
「何か困っている?」
と、短く聞いてみます。
理由がうまく言葉にならなければ、手が止まっているところを一緒に見てみてもよいでしょう。
必要に応じて、置く場所を整える、最初の一つを手伝う、遊びを終える区切りを相談する。
声かけだけで解決しようと急がず、その日の様子に合わせて、できることを考えていきます。
子どもが自分で進めているときは、任せる
具体的な声かけは、何から始めればよいか分かりにくそうなときに使える方法の一つです。
子どもが自分で考えて進めているときまで、一つひとつ指示する必要はありません。
大人とは順番が違っていても、その子なりに片づけたり、準備したりしているなら、少し見守ってみます。
「どこから始めようか」と、子ども自身に選んでもらう日があってもよいでしょう。
手助けが必要なところには言葉を添え、自分で進められるところは任せる。その加減も、子どもの様子を見ながら変えていけたらと思います。
気づいたときに、一言だけ言い直す
忙しい毎日のなかで、いつも言葉を選んで話すのは難しいものです。
「ちゃんとして」と言ってしまったからといって、自分を責めなくても大丈夫です。
気づいたときに、
「今しまってほしいのは、この積み木だよ。かごに入れよう」
と、具体的に伝え直すことができます。
毎回、完璧に言い換えようとしなくても構いません。
いつもの声かけを一つだけ、何をしてほしいのかが分かる言葉にしてみる。
その小さな工夫から、親子で「何をするのか」を確かめるやりとりを始めてみませんか。
