「遅くないよ」より「早いね」──ことばが育てる、子どもの心のイメージ

肯定形で話しかけることを象徴する写真

子どもへの声かけ、どんな言葉を選んでいますか?
つい、「○○じゃないよ」と否定形で伝えてしまうことがあります。でも、実は小さな子どもにとって、その言葉がけは少し難しいものかもしれません。
今回は、シュタイナー教育の視点から「子どもの心に届く言葉がけ」についてお話しします。

否定形が伝わりにくいのはなぜ?

例えば、子どもに「ぼくって走るの遅いかな?」と聞かれたとき、つい「遅くないよ」と答えてしまうことがあります。
しかし、2歳未満の子どもにとって「遅くない」という言葉を理解するのはとても難しいのです。

なぜなら、否定形を理解するためには次の2つの力が必要だからです。

  • ① 「遅い」というイメージを思い浮かべる力
  • ② そのイメージを「ちがう」と否定する力

この2つの力を同時に使うことは、小さな子どもにはまだ難しいこと。
そのため「遅くないよ」と言われても、心には「遅い」というイメージのほうが残ってしまうのです。

肯定形で伝えると、子どもの心に光が届く

「遅くないよ」と言う代わりに、「早いね」「楽しそうに走ってるね」と肯定的に伝えてみましょう。
すると、子どもの中には「できている」という明るいイメージが残ります。

たとえば、
・「泣かないで」ではなく「笑ってごらん」
・「転ばないように気をつけて」ではなく「しっかり歩こうね」
といったように、ポジティブな言葉に変換することができます。

言葉は、子どもの世界をつくる小さな魔法。
大人の声のトーンや言葉の形が、子どもの心に映像として残っていきます。

日常でできる言葉がけの工夫

難しく考える必要はありません。
まずは「〇〇しないで」「〇〇じゃない」など、否定形が出たときに一度立ち止まって、肯定的な言葉に置きかえてみましょう。

たとえば

  • 「遅くないよ」→「早いね」「一生懸命走ってるね」
  • 「こぼさないでね」→「ゆっくり入れようね」
  • 「忘れないでね」→「覚えておこうね」

少しずつでも、肯定形の言葉がけを増やしていくと、子どもは「できる」「やってみたい」という意欲を自然に育んでいきます。

まとめ ことばがけは、心の種まき

子どもは大人の言葉を通して、自分の世界を知っていきます。
だからこそ、私たち大人がどんな言葉を贈るかはとても大切です。

「遅くないよ」より「しっかり走れてるよ」
その小さな言葉の違いが、子どもの中にやさしい光を灯します。
今日から少しずつ、「できる」「楽しい」「うれしい」を感じる言葉を届けていきましょう。

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