「なんでするの？理由は？」──子どもからの問いかけに、つい正確な説明を用意して答えたくなるものです。でも、子どもの育ちには、答えのない時間をゆっくり抱えることも大切。シュタイナー教育の考えをふまえ、心と体で受け止める声かけと、毎日の実践方法をお伝えします。
なぜ「理由を全部説明する」必要はないのか
私たちはつい「理由」を示すことで安心させようとします。確かに説明は有効な場合が多いですが、すべてに答えを与えると、子どもの「考え続ける時間」が減ってしまうことがあります。
子どもが何かを問いかけるとき、本当は「理由が知りたい」よりも「一緒に不思議を分かち合いたい」という気持ちの場合もあるのです。理由を与えるだけでなく、問いをそのまま胸に残すことを許すのも、育ちの一部です。
シュタイナー教育の視点 頭だけでなく、心と体で受け止める
シュタイナー教育は「頭・心・体」のバランスを重視します。単に知識を詰め込むのではなく、体験や物語を通して感性を育てることを大切にします。
「理由がない」ことをそのまま感じる時間は、想像力や感受性、思考の深まりを育てる重要な機会になります。親が答えを急がず、子どもの中に問いをとどめることを優しく支える──それが深い学びにつながります。
日常で使える、声かけのコツ
短く安心させる一言を
まずは共感の一言。「ふしぎだね」「いい質問だね」と短く返すだけで、子どもは安心して問いを抱えられます。
答える代わりに一緒に考える
「どうしてだろうね？」と子どもに問い返してみましょう。自分で考えるプロセスを通じて、答えのない問いにじっくり向き合う力が育ちます。
ときには感覚で返す
言葉で説明しづらければ、「だって楽しいから」「あなたが好きだから」といった感情ベースの返しも有効。言葉より先に安心や愛情が伝わります。
よくある不安とその回答
Q. 答えを与えないと混乱しない？
A. すべてを放置するわけではありません。必要なときは説明し、同時に「考える時間」を残すバランスが肝心です。
Q. 学校の勉強に影響は？
A. 理解力や思考力の基礎は、問いを抱え続ける経験でも育ちます。説明と内省の両方が補い合います。
まとめ
すべてに「理由」を用意しなくても大丈夫です。ときには言葉ではなく、心で受け止めること。シュタイナー教育の考えにあるように、頭・心・体を使って問いを抱える体験は、子どもの深い成長につながります。
「だって楽しいから」や「あなたが好きだから」といった、理屈ではない理由で抱きしめる日も、どうか許してあげてください。あなたのそのまなざしが、子どもの根を深くします。
