子どもが描いた絵や、つくったものを持ってきて、
「見て!」
とうれしそうに見せてくれることがあります。
そんなとき、皆さんはどのような言葉をかけていますか。
「上手だね」
「すごいね」
「きれいにできたね」
子どもを喜ばせたい、その頑張りを認めたいという思いから、自然に出てくる言葉ではないでしょうか。
もちろん、「上手だね」と伝えることが悪いわけではありません。
ただ、作品を見せてもらうたびに大人が評価を返していると、子どもが少しずつ、
「これ、上手?」
「これで合っている?」
「前の絵と、どっちがすごい?」
と、大人の判断を求めるようになることがあります。
今回は、作品の良し悪しを決める前に、子どもの表現をそのまま受け取るための言葉を考えてみます。
子どもが作品を見せるのは、評価してほしいから?
子どもが「見て」と作品を持ってきたとき、必ずしも点数や評価を求めているとは限りません。
「こんなものができたよ」
「一緒に見てほしい」
「自分が夢中になった時間を知ってほしい」
という気持ちで、持ってきているのかもしれません。
そのようなとき、大人がすぐに「上手」「すごい」と結論を出さなくても大丈夫です。
まずは手を止め、作品を見ます。
それだけでも、「あなたがつくったものを受け取っています」というメッセージになります。
「上手だね」が悪いわけではありません
子どもへの声かけを考え始めると、
「上手だねと言ってはいけない」
「褒めてはいけない」
と、窮屈に感じることがあります。
けれど、言葉を禁止する必要はありません。
心から「すてきだな」「よくつくったな」と感じたときには、その気持ちを伝えてよいのです。
大切なのは、いつも同じ評価の言葉だけで終わらせないことです。
作品に表れているものや、子どもが取り組んでいた過程にも目を向けると、言葉の選択肢が広がります。
目の前にあるものを言葉にする
評価する代わりに、まず自分が気づいたことを言葉にしてみます。
例えば、
- 「いろいろな色が重なっているね」
- 「紙いっぱいに描いたんだね」
- 「長い線が、ここまで続いているね」
- 「小さなものが、たくさん並んでいるね」
- 「この部分は何度も色を重ねていたね」
という言葉です。
「良い」「悪い」を決めるのではなく、目の前にあるものを一緒に眺めます。
大人が丁寧に見てくれたことが、子どもにも伝わるでしょう。
ただし、細部をすべて説明する必要はありません。一つ気づいたことを、短く伝えるだけでも十分です。
完成した作品だけでなく、つくっていた時間を見る
絵や工作には、完成した形だけでなく、そこへ至るまでの時間があります。
途中で思うようにいかず、やり直したかもしれません。材料を選びながら、長い時間考えていたかもしれません。
そんな姿を見ていたら、
「長い時間、夢中でつくっていたね」
「何度も試していたね」
「自分で色を選んだんだね」
「途中で困っていたけれど、続きを考えたんだね」
と、過程を言葉にできます。
子どもが自分の力で取り組んだことを、そのまま受け取る言葉です。
シュタイナー教育では、完成した作品の上手さだけでなく、子どもの内側から表現が生まれ、手を動かして形にしていく過程を大切にします。
大人が期待する完成形へ導くよりも、その子が何を感じ、どのように手を動かしているのかを見守ります。
すぐに「これは何?」と尋ねなくても大丈夫
子どもの絵を見ると、
「これは何を描いたの?」
「これはお家?」
「こっちはお母さん?」
と尋ねたくなることがあります。
けれど、子どもは最初から描くものを決めているとは限りません。
色を重ねたり、線を動かしたりしているうちに、イメージが生まれることもあります。まだ名前をつけたくない、言葉では説明できない世界を描いているのかもしれません。
大人が先に「これは○○だね」と決めると、子どもの中にあったイメージが、大人の答えに置き換わってしまうこともあります。
すぐに説明を求めず、まずは一緒に眺めます。
子どもが話したそうなら、
「お話したくなったら、聞かせてね」
「どんなことを考えながらつくったのかな」
と、答えを強制しない形で扉を開いておきます。
子どもが「特に何もない」「分からない」と答えたら、それもそのまま受け取ります。
「これ、上手?」と聞かれたときは
子どもから直接「上手?」と聞かれることもあります。
そのようなとき、質問を避けるために、
「あなたはどう思うの?」
と聞き返すだけでは、子どもが寂しく感じる場合があります。子どもは評価よりも、大人と喜びを分かち合いたくて尋ねているのかもしれません。
まずは、
「見せてくれてうれしいよ」
「この色が重なっているところ、すてきだと思ったよ」
「ずっと考えながらつくっていたね」
と、自分が感じたことを率直に伝えます。
そのうえで、
「自分では、どこが気に入っている?」
「つくっていて楽しかったところはある?」
と尋ねることができます。
大人の感想も伝えながら、子ども自身がどう感じているかにも耳を傾けます。
比べる言葉をできるだけ減らす
作品を見たとき、
「前より上手になったね」
「お兄ちゃんより丁寧だね」
「クラスで一番きれいかもしれないね」
と言いたくなることもあります。
けれど、誰かとの比較が続くと、子どもの関心が「何をつくりたいか」から「誰より上手か」へ移ってしまう場合があります。
成長を伝えたいときは、
「前は一本だった道が、今日は町まで続いているね」
「自分で針に糸を通せるようになったね」
など、具体的な変化を言葉にしてみましょう。
誰かより優れていることではなく、その子自身の経験の積み重ねを見ます。
直したくなったときは、少し待ってみる
絵の形や工作のつくり方が、大人には「間違っている」ように見えることがあります。
しかし、子どもの作品は、いつも現実を正確に再現するためのものではありません。
空が赤くても、人より家が小さくても、左右がそろっていなくても、その子にとっては必要な表現なのかもしれません。
安全上の問題がない場合は、すぐに直したり、より上手に見える方法を教えたりせず、子どもがどのように進めるかを見守ります。
助けを求められたときには、
「どこを手伝ってほしい?」
「一緒に考えてみようか」
と、必要な分だけ手を添えます。
評価する前に、まず受け取る
子どもの作品に向き合うとき、特別な言葉を用意する必要はありません。
まず手を止めて見る。
目の前にあるものに気づく。
つくっていた時間を思い出す。
話したそうなら耳を傾ける。
そして、
「見せてくれてありがとう」
と受け取ります。
大人の評価によって作品を完成させるのではなく、その子が生み出したものを、そのまま迎えること。
次に子どもが作品を見せてくれたとき、「上手だね」と言う前に、一つだけ気づいたことを言葉にしてみませんか。
