「片づけなさい」と何度言っても、子どもがなかなか動いてくれない。
毎日の暮らしの中で、そんな場面に出会うことはありませんか。
何度も声をかけているうちに、大人の声は少しずつ大きくなり、子どもも不機嫌になってしまう。ようやく片づけが終わったころには、親子ともに疲れていることも。
そんなときは、子どもの立場から片づけを眺めてみると、少し違った見方ができるかもしれません。
子どもにとって片づけは、楽しい遊びを突然終わらせるものになっていることがあるからです。
そこで今回は、片づけを「言われたからすること」ではなく、暮らしの自然な流れにしていくための工夫をご紹介します。
子どもが片づけたがらないのは、なぜ?
子どもが夢中になって遊んでいるとき、その遊びの世界は外から見える以上に豊かです。
積み木で作った家には住んでいる人がいて、並べた木片は電車になり、布の下には秘密の部屋が広がっているかもしれません。
そんなときに突然「もう終わり。片づけなさい」と言われると、子どもはすぐに気持ちを切り替えられないことがあります。
これは、単に言うことを聞きたくないからとは限りません。まだ遊びの中に心があり、次の時間へ移る準備ができていないのかもしれません。
だからこそ、片づけを促すときには、遊びから次の活動へ移るための小さな橋を用意してあげることが大切です。
1.片づけるタイミングをできるだけ同じにする
最初に試してみたいのは、毎日できるだけ同じタイミングで片づけを始めることです。
例えば、
- 夕食の前に片づける
- お風呂に入る前に片づける
- 時計の針が決まった場所に来たら始める
- 家族が帰宅する少し前に始める
その日の都合によって多少前後しても構いません。
大切なのは、片づけが大人の気分によって突然始まるのではなく、毎日の暮らしの中にある程度決まった場所を持っていることです。
同じ流れを繰り返すうちに、子どもは少しずつ「もうすぐ片づけの時間だ」と感じられるようになります。
2.片づけの合図を決める
時間だけでなく、片づけを始める合図を決めるのも一つの方法です。
例えば、
- いつも同じ歌をうたう
- カーテンを閉める
- 部屋の明かりをつける
- 夕食の食器を並べ始める
- 「おもちゃをお家へ帰そう」と声をかける
子どもは、言葉による指示だけで暮らしているわけではありません。音や光、大人の動き、毎日の順番からも、次に何が始まるのかを感じ取っています。
「今すぐ片づけなさい」と強く言う代わりに、決まった合図を繰り返すことで、気持ちを切り替えるための時間が生まれます。
歌を使う場合は、上手に歌う必要はありません。家庭で歌いやすい短い歌や、親子で親しんでいるメロディーでも十分です。
3.大人が静かに片づけ始める
子どもだけに片づけを任せるのではなく、初めは大人も一緒に手を動かしてみましょう。
離れたところから、
「早く片づけて」
「まだ終わっていないの?」
と繰り返すよりも、大人がそばへ行き、静かに一つ目のおもちゃを手に取ります。
そして、
「積み木は、このかごに帰ろうね」
「お母さんは布をたたむね」
「こちらの車をお願いできる?」
など、何をすればよいのかを具体的に伝えてみます。
「部屋を全部きれいにする」という大きな課題は、子どもにとって何から始めればよいか分かりにくいものです。
「赤い積み木を集める」「人形を棚へ戻す」など、目の前の小さな行動にすると、取りかかりやすくなります。
大人が手を動かしているうちに、子どもも自然に加わることがあります。すぐに動かなかったとしても、必要以上に急かさず、毎日の流れとして繰り返していきます。
4.すべてを完璧に片づけなくても大丈夫
片づけは、毎回すべてを元どおりにすることだけが目的ではありません。
長い時間をかけて作った積み木の家や、明日も続きを楽しみにしている遊びは、一部を残しておく日があってもよいでしょう。
「今日はここまで残しておこう」
「道に使った積み木だけ、かごへ戻そう」
と相談することもできます。
子どもの遊びを大切にしながら、暮らしに必要な空間も整える。その両方の間に、その家庭に合った着地点を見つけていければよいのではないでしょうか。
完璧な片づけを目指しすぎると、大人にとっても子どもにとっても、片づけが苦しい時間になってしまいます。
まずは、昨日より一つ戻せたこと、一緒に始められたことを大切にしてみましょう。
すぐにうまくいかなくても、焦らずに
決まった時間や合図を取り入れても、すぐに子どもが一人で片づけられるようになるとは限りません。
疲れている日もあれば、遊びに深く入り込んでいる日もあります。大人にも、ゆっくり付き合う余裕がない日があるでしょう。
毎日同じようにできなくても大丈夫です。
「今日は歌をうたえなかった」
「結局、ほとんど大人が片づけた」
という日があっても、それまでの積み重ねがなくなるわけではありません。
片づけをしつけの成果としてだけ捉えず、親子で暮らしのリズムをつくっていく時間として、長い目で見ていきましょう。
