『子育てニュース』通知表をやめた公立小学校、その後どうなった?

冬の空に伸びていく樹木の枝の写真

「通知表なし」の学校があるのをご存じですか? 神奈川県茅ケ崎市の公立小学校・香川小学校は、2020年から通知表を完全に廃止しました。

学期末や学年末になると、一喜一憂しながら通知表を受け取る——これは多くの家庭で当たり前の光景です。けれど、香川小学校ではこの「当たり前」を見直しました。では、実際に通知表をなくして、どんな変化があったのでしょうか?


通知表をやめた理由

この取り組みの背景には、当時の校長・国分一哉氏の問題提起がありました。

「良い評価が多かったら喜び、そうでなければ悲しむだけ。それでは意味がないのではないか?」

この問いかけがきっかけで、教員たちの間で議論が始まりました。そして、多くの教員が、通知表による評価に疑問を抱いていたことが明らかになったのです。

  • 「成績がいい子が優れた人格を持ち、そうでない子は平凡、という見方になってしまう」
  • 「勉強が得意な子ばかりが評価され、他の才能が埋もれてしまう」
  • 「通知表のインパクトが強すぎて、普段の声かけがかき消されてしまう」

こうした声が上がる一方で、「成績を知りたい保護者もいる」「子どものモチベーションになっている」という意見もあり、議論は2年間にわたって続きました。


通知表をやめた結果

実際に通知表をなくしてみると、学校や子どもたちにさまざまな変化が現れました。

① 教職員の負担が軽減し、療休ゼロに! 通知表の作成には多くの時間と労力がかかります。しかし、それがなくなったことで、教師たちは子ども一人ひとりと向き合う時間を増やすことができました。その結果、5年間にわたり教職員の療休(病気休職)がゼロになったのです。

② 不登校児童が少ない 通知表による「評価」がなくなり、子どもたちは競争やプレッシャーから解放されました。「勉強ができる・できない」ではなく、「その子自身の成長を見守る教育」に変わったことで、不登校の児童が減少したと言われています。

③ 子どもたちの学びが変わった 評価をされるために勉強するのではなく、自分自身の学びとして授業に向き合うようになった子どもが増えたそうです。


保護者や社会の反応

通知表の廃止について、保護者からは賛否両論の意見が寄せられました。

肯定的な意見

  • 「数字だけでは分からない部分を丁寧に見てくれるようになった」
  • 「子どもがプレッシャーを感じずに学べる環境になった」
  • 「子どもの成長を日常の中で感じられるようになった」

懐疑的な意見

  • 「頑張りが形として残らないのは寂しい」
  • 「将来的に競争が続く中で、自己評価ができなくなるのでは?」
  • 「通知表がないと、子どもの学力がどの程度なのか分かりにくい」

このように、評価のあり方については様々な意見があるものの、香川小学校では子どもたちの個性を大切にする教育へとシフトしているのです。


シュタイナー学校との共通点

実は、シュタイナー学校ではもともと数値評価の通知表は存在しません。その代わりに、先生が子どもの成長を詩で表現し、「成長の記録」として手渡します。

この方法の特徴は、

  • 子どもが比較されるのではなく、個性を尊重される
  • 数値では表せない長所や努力がしっかり伝わる
  • 先生と子どもの関係性が深まる

という点にあります。

香川小学校の取り組みは、こうした「個を大切にする教育」の流れに近いものと言えるかもしれません。


通知表は本当に必要なのか?

私たちは長い間、「通知表は当たり前のもの」と考えてきました。けれど、その「当たり前」を見直すことで、新しい教育の形が見えてくるのではないでしょうか。

通知表があることで励みになる子もいれば、プレッシャーに感じる子もいます。大切なのは、子どもが本来の自分らしさを大切にしながら学びを楽しめる環境を整えること。

あなたは、通知表のない学校についてどう思いますか?

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